スタッフブログ 称揚苑
  • 詩集。

     

    母を老人ホームに入れた

     

    認知症の老人たちの中で

    静かに座って私を見つめる母が

    涙の向こう側にぼんやり見えた

    私が帰ろうとすると

    何もわかるはずもない母が

    私の手をぎゅっとつかんだ

    そしてどこまでもどこまでも

    私の後を付いてきた

     

    私がホームから帰ってしまうと

    私が出ていった重い扉の前に

    母はぴったりとくっついて

    ずっとその扉を見つめているんだと聞いた

     

    それでも

    母を老人ホームに入れたまま

    私は帰る

    母にとっては重い重い扉を

    私はひょいと開けて

    また今日も帰る

     

    IMG_1298.JPG

     

    書店で見つけた詩集の中から一つをご紹介いたしました。

    施設に勤める者として、切なく感じる一方でご家族の想いにも共感できる詩です。

     

    実際に家族になる事はできなくても、近い存在になる事ができますように。

     

    称揚苑4階 職員